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ここは阪南大学経済学部教員・下地真樹がかかわっている教育と研究と市民活動に関する情報発信のためのサイト「MOJI's Cafe」です。「モン=モジモジ」は僕のネット上でのペンネームです。

 

2012年12月9日に大阪府警公安三課によって不当逮捕。28日処分保留のまま釈放。逮捕までも、獄中からも、釈放されてからも、大阪府警による市民運動への弾圧に対して断固抗議しています。

 

新着情報

26

5月

2014

心理学系の本、2冊

1.キース・ソーヤー『凡才の集団は孤高の天才に勝る』ダイヤモンド社、2009年(原著2007年)。

2.ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか(第二版)』誠信書房、2007年(原著2001年)。

 

いずれも心理学系の本ですね。

1.は、いわゆる「グループ・ジーニアス(集団の英知)」に関する心理学的な知見をまとめたもの。原題は "Group Genius" 。しかし、この邦訳タイトルはミスリーディングではないか、という気がする。

 

本書は、単純に「集団の英知は、一人の思考に勝る」ということを述べた本ではない。「集団思考の罠」についても述べているし、「一人の思考に見えるものが、実際にはいかに多くの人の思考に支えられているか」を丁寧に説明していたりする。要するに、思考の実質的な集団性が重要なのであり、実際にたくさんの人が同じ場所にいること自体に意味があるのではない。

 

だから、下手をすると「凡才の集団は、孤高の凡才にすら劣る」ことがありうる。大事なことは一人ひとりの思考の質であって、一人ひとりが互いに独立な思考プロセスを持っていることだ。いわゆる「うなづきあい」的な関係性の中ではグループ・ジーニアスは発揮されず、むしろ、誤った信念を強化し合うダメな集団になりうる。

 

2は、説得する/されるときに作動している心理学的なメカニズムを、6種類の「武器」のそれぞれについてまとめたもの。「影響力の武器」には、「返報性」「一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」の6種類があるのだが、知っていれば、誰かを説得する上でも、誰かに騙されないためにも、役に立つことは請け合い。

 

公共的・民主的な討議との関連で重要なのは、「社会的証明」と「権威」かな。「社会的証明」とは、「みんなが正しいと言っているから、正しいと信じる」ようなメカニズムのこと。「権威」とは、「情報源の権威に基づいて、正しいと信じる」ようなメカニズムのこと。どちらもまちがいの元になりそうな思考法だが、しかし、なんでもゼロから考え直すには、僕らには能力も時間も限られているので、社会的証明も権威主義も、簡便法として完全には放棄できないのも確か。悩ましい。

 

しかし、すべての知見をゼロから考え直すことは困難でも、少なくとも重要な根幹にかかわるところについてはきちんと論理を辿ること、論争的なポイントについては、やはりきちんと論理を辿ること、そういうことができればいいのではなかろうか。つまり、「適切に、社会的証明や権威主義による判断を停止して独立した思考過程に入る」、その条件をいかに設定するか、ということだろう。

 

いずれにせよ、社会的証明や権威主義によらない思考に「慣れておく」ことは有用だし、時間の許す限り、また、手分けしてそうした思考を行っておくことも有用だろう。やはり、基本に戻るのが大事、ということか。